2016年8月29日月曜日

村上春樹とイラストレーター


  『村上春樹とイラストレーター――佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸』 監修 ちひろ美術館 ナナロク社 1800円+税 


 
 5月から8月初旬、ちひろ美術館・東京で開催された展覧会の関連書籍。A6判、ハードカバー、240ページ、オールカラー。
 村上春樹の文章とイラストレーション・装幀は融合しているというか、あの作品ならあの絵、と思い浮かべられるものが多い。

佐々木マキは『風の歌を聴け』(講談社)単行本の表紙を編集者から依頼された。春樹は高校生時代から佐々木の愛読者で、自分の最初の小説の表紙は「どうしても佐々木マキさんの絵でなくてはならなかった」。佐々木は〈絵〉が思い浮かばず、断わる。

《すると、編集者がやって来て「村上さんは〈神戸でアメリカン・グラフィティ〉を書きたかったそうです」と言うじゃないか。(中略)
 私は〈神戸でアメリカン・グラフィティ〉というのが、すっかり気に入った。それなら私も自分なりの〈神戸でアメリカン・グラフィティ〉を描いてみよう。そう決まると、あとは簡単だった。二日で仕上げた。(後略)》

 大橋歩は『村上ラヂオ』(雑誌「anan」マガジンハウス)の挿絵を銅版画で描いた。

《村上さんからは、絵に関してはまったく注文とかはありませんでした。そういうことでいえば緊張もしましたし、毎回一応私なりに戦いがありました。》

 和田誠と安西水丸は春樹と絵本(『NO IDEA』金の星社、2002年)を作っている。『村上春樹 雑文集』(新潮社)の装画も描いている。

安西 まあ、僕は若い頃からなんとなく付き合ってるうちに親しみを持ってもらったといか、仕事なんか考えずにただ友達になって、ある日、雑誌の挿絵を頼まれたんです。文化出版局から出てた「TODAY」という雑誌に載った「鏡の中の夕焼け」という短編(『象工場のハッピーエンド』〈CBS・ソニー出版、一九八三〉所収)。すごくいい話ですよ。
(中略)
 和田 僕はジョン・アーヴィング『熊を放つ』(中央公論社、一九八六)、『‛THE SCRAP’』(文藝春秋、一九八七)の装幀からだから、水丸さんの歴史に比べれば、春樹さんとの関係はまだ新人なんですよ。〉
(平野)