2020年5月31日日曜日

林芙美子『放浪記』


 5.28 元町事務局に原稿届けて、買い物して本屋さん。青山文平『春山入り』『半席』(新潮文庫)、『励み場』(ハルキ文庫)大国正美『古地図で楽しむ神戸』(風媒社)
 



 

 5.29 労働日。朝は爽やかだったが、午後の日差しはメッシュの制帽を突き刺し、後頭部がヒリヒリする。野鳥は今日も抱卵中。

 読書は時代小説休憩。『森まゆみと読む 林芙美子「放浪記」』(集英社文庫)。人気作家になる前の苦難の日々。芙美子は渡る世間も、男も、全部肥やしにしてしまう。貧乏でも文学を志す若者たちがいる。文学史に名を残す人もいれば、無名のまま消えた人も。

森が読む『放浪記』は1937年の改造社版。私たちが今手にする新潮文庫版は、芙美子が有名作家になった後に書き直した『決定版 放浪記』(新潮社、1939年)をもとにしている。現在形を過去形にし、回顧調にし、丁寧語にし、思想的表現を削除した。お行儀よく、上品になっている。森の読みは鋭い。

〈当初の、二十歳そこそこの、どん底の女の野生的な詩情やずぶとい開き直りは消えてしまった。〉

〈原『放浪記』が一生に一度しか書けない進行形の「青春彷徨の書」なら――いや「青春咆哮の書」かもしれないが――、一方、今流布している『放浪記』は「成功者の自伝」になっている。「こんな私でも大変な時もあったのよ」と。〉

 1926年、芙美子は同棲していた詩人の浮気を知って、旅に出る。神戸で途中下車、楠公さん(湊川神社)にお参りして、海岸通の宿に泊まる。尾道の女学校在学中、夏休みに神戸で子守り奉公をしたことがあり、土地勘があった。メリケン波止場から母のいる高松に向かう。
 
 

 5.30 久々の図書館。長い間借りっぱなしの移民本を返却。閲覧室・ふるさと文庫の開放はまだまだ。『竹中郁全詩集』(角川書店、1983年)借りる。

 留守番ヂヂ、晩飯用意して、落語ビデオ、ラジオ。

(平野)