■ 『兵庫県古書籍商業協同組合 10年略史 1986~1995』 同組合編・発行 1997年4月 非売品 B5判
2.7震災後初めての市会は組合主催として開催。1.17以前に搬入していた荷に近郊の店が持ち寄る分を加えて開くことができた。
全壊した店のご主人の手記。
命からがら脱出。全壊の店舗兼住まいから必要なものを取り出し親戚に預けるが、本は同業者に車2台分だけ預かってもらう。あとはツブす。解体の日。
8月仮設店舗で再開。しかし、現在このお店の名は聞くことはない。
第1部 兵庫県古書籍商業協同組合10年略史 1986-1994
第2部 震災小史 1995
「震災小史」より。
1.17当日は組合の市会の日。何かの本で、あるご主人が市会はあると思って古書会館まで来た、と読んだことがある。
通常の市会は「同人」と言われるグループが主催する。1.17は「一神会」の市日。2.7震災後初めての市会は組合主催として開催。1.17以前に搬入していた荷に近郊の店が持ち寄る分を加えて開くことができた。
……開会まで危惧の声もあったが、震災以後組合員の参集する機会が持てずに来たこと、また大阪、岡山、徳島各組合からの来会をも得て、約五十名の参会者があり、予想以上の出来高を示して、成功の裡に終わった。何よりも各組合委員が顔を合わせ、無事を喜び合ったことが、この市会の最大の意義であったと言える。出品された荷の中には壁土を噛んだ本も見られ、地震の凄まじさを留めるこれらの商品は、その後も市会に出品されていた。……
2.21「一神会」市会。まだ道路が交通規制と大渋滞のため、深夜12時を過ぎてから搬入作業となった。「一神会第八十二回出品目録抄」が本書に掲載されている。
先月一月十七日は一神会の市当日でした。前日にテーブルを並べて置いたので、当日午前中の準備は楽だし、天気予報も雨の心配なし、荷物も平均的に集まっている。……全て順調に思われた日が数十秒のゆれでとんでもない一日に変わり果ててしまいました。おそらく組合委員の方々がそれぞれの地域で恐怖し、あわてふためき、胃が痛む程心配なされたことと思います。身内あるいは極く身近な知人をなくされた方もおられます。又、何年も何十年も営んできた店舗あるいは商品の倉庫、自宅を一瞬にして失われ、今でも先行きの見通しも立たず、不安な日々を送っておられる方もいらっしゃいます、この無念の想いと虚脱感は、はかり知れないと存じます。
それでも、一ヶ月が経過し、一神会の市日(月の第三火曜日)が再びやってきました。やります。泣きながらでも本を持って来て下さい。交通事情、運搬事情は依然悪く、不便とは思いますが市に足を運んで下さるようお願い申しあげます。
組合員の被害状況(2.9現在)、店舗全壊18、全焼1、自宅全壊17、自宅全焼2。
全壊店舗のうち、4月の時点で組合脱退(廃業)が2。仮設で再開できた店、再開未定の店と明暗がわかれる。全壊した店のご主人の手記。
……「駄目かも知れん、蒲団をかぶれ」家内にそういったと思うが通じたかどうか判らない。上下の激震が済んだと思ったら、アチコチから物が落ちたり、柱が倒れたりしてきた。暗闇だから、それは何がどうなったか判らないのだが、――。私の頭のパラパラは長年家内と旅行して溜めたコケシ等のコレクションが落ちてきたとは意識した。床柱や天井の梁まで倒れてきた。その瞬間は全く考えもしなかったことである。気がついたら瓦も屋根もなく、星空が見えていたというのが正味本当のことだった。気がついたらとかなんとか言いますが、全く意識がさめた状態ではなくて、そんな風景画、そんな星空があったという記憶だけなのです。……
命からがら脱出。全壊の店舗兼住まいから必要なものを取り出し親戚に預けるが、本は同業者に車2台分だけ預かってもらう。あとはツブす。解体の日。
……家と店は私です。四十年も培った大切なものです。私の後半生の歴史でもあるのです。それが、たった一日二日で無くなってゆくのです。ブルドーザーという怪物の轟轟ゴツンゴツンが地震の響きに似ているのです。
あゝ、我が家が哭いている――。8月仮設店舗で再開。しかし、現在このお店の名は聞くことはない。
(平野)
12日朝、F店長から電話連絡。11日、懇意の古本屋・ロードス書房ご主人が逝去。【海】でも、私事でもお世話になりました。いろんな思い出があります。ご冥福をお祈りいたします。