2015年6月21日日曜日

本屋になりたい


  宇田智子 『本屋になりたい  この島の本を売る』 
ちくまプリマー新書 820円+税  高野文子[絵]
 

 著者はジュンク堂書店池袋本店勤務時代に沖縄本の魅力に引かれ、「沖縄の本を沖縄で売ったら面白いだろうな」と考えた。那覇店開設時に希望して異動し、沖縄本コーナーを担当したが、2011年退職。那覇市の公設市場近くの古本屋を引き継ぎ、「市場の古本屋ウララ」を開業した。店内1.5坪、路上に棚を出して計3坪という規模。

《――独自の歴史、豊かな自然と文化、地元に密着した狭くも深い本の世界にすっかり魅せられながら、絶版になった本や限定販売の本の多さに、新刊書店の限界を感じていました。古本屋なら、なんでも置ける。そして市場なら、わざわざ本屋に来ない人にも沖縄本を見てもらえる。市場で沖縄の本を売るという思いつきにワクワクしました。》

序章 古本屋、始めました
一章 本を仕入れる
二章 本を売る
三章 古本屋のバックヤード
四章 店番中のひとりごと
五章 町の本を町で売る

 大書店を辞め小さな古本屋を始める、それも故郷から遠く離れた場所で。古本屋で「生計を立てる」ことができるかどうかが大きな不安だった。

《いま、私の店は沖縄の本に支えられて成り立っています。売上でも、気持ちの面でも。地元の本を地元で売る、という希望が叶えられているからです。通りかかった人が、
「沖縄の本がこんなにあるなんて知りませんでした」
 と言って買ってくれたとき、ここで本屋をやっていてよかったと感じます。》

 著者は好きな土地で好きな本を集めた。彼女はそこに集まる人に本を売って、それで暮らしていける。「いま目のまえにいる人に何かを伝えようとする本を、手渡す」仕事をしている。

(平野)