2015年11月19日木曜日

まちの本屋


 田口幹人 『まちの本屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕す』 

ポプラ社 1500円+税


 岩手県盛岡市さやわ書店フェザン店店長。1973年、岩手県西和賀町の本屋の生まれ。盛岡の第一書店勤務後、2000年に実家を継ぐが、「7年間の苦闘の末、店を閉じ」た。2007年、さわや書店入社。フェザン店は駅ビル内の小さな店。30万都市・盛岡には大型店や複合型のチェーンが進出、地元の老舗もある。そんな中でフェザン店は独自色を前面に出している。

《僕たちが大事にしているのは、「一冊一冊にこだわりを持って売る」ということに対する情熱です。》

 著者プロフィールで以下の紹介がある。

《地域の中にいかに本を根づかせるかをテーマに、中学校での読書教育や、職場体験の中学生を受け入れ、イベントの企画、図書館と書店との協働など積極的に行う。「売る」と決めた本は、あらゆる工夫をして徹底的に売ることでも有名で、さわや書店から生まれたベストセラーは数多い。》

 仕掛け販売が多いのかと思ってしまうが、ちがう。フェザン店が、まずお客さんに見てほしい棚の一つが郷土書売り場。口絵写真を見ると店の入口にある。

《今は売れなくても、絶対にこの店にとって重要な売り場だ、というところを選別できるかどうか。これが、その店の矜持であり、スタンスになっています。(中略)
 さわや書店フェザン店の場合、それは郷土書と言われる売り場です。絶対にここは引かない。そこには震災関連本も含まれます。》

紹介したいエピソードはたくさんあるが、ひとつだけ。田口はお客さんによく言われる。
「この店はさぁ、買おうと思った本が置いてないんだよね」
 田口は申し訳なく、入門書しかないこと、調べてリストはお渡しできること、取り寄せに時間がかかることを詫びて、大型店を紹介する。でも、そのお客さんはこう言う。
「でもなぁ、買おうと思っていた本とは違う本を、いつも二、三冊買っていっちゃうんだよなぁ(笑)」
 このやり取りはお国の言葉で聞きたい。
 1113日に田口の講演が大阪で開かれた。全国から若い書店員たちが駆けつけた。打ち上げには60人以上が参加、居酒屋ワンフロア占拠。
 田口は本屋の「今」と「未来」を語っている。「まちの本屋」をやっていく「覚悟」を持っている。
(平野)

 ヨソサマのイベント
 9回天神さんで一箱古本市
1122日(日) 10001600くらいまで
京都府長岡市長岡天満宮参道
http://suirenndou.exblog.jp/