2019年8月31日土曜日

あなもん


 戸川昌士 『あなもん』 Pヴァイン発行 
日販アイ・ピー・エス発売 2300円+税
 

 

 著者は神戸元町の通称「穴門商店街」にある古本屋「ちんき堂」店主。本書は神戸新聞連載コラム(9年半)をまとめる。穴門にある「珍奇」な本屋……? 表の看板はクネクネした裸のおじさん、ほんまに怪しい。店に入るのはかなり勇気がいる。でもね、店主は紳士。
「穴門」の地名由来は諸説ある。 店主は、昔ここにトンネルのある小山があった、という説を紹介している。でもね、神戸のサブカル・アングラ情報に詳しい店主は、「相当に俗っぽいものではないか」と推察する。
 アート、漫画、映画、音楽、もちろん文学書も並ぶ。他に、ポスター、サイン色紙、ブロマイドなど、サブカルチャーに強い。店主には『猟盤日記』『助盤小僧』などの著書がある。「盤」とは古いレコード、CDのこと。
 本書では、商売で体験した喜怒哀楽話。珍奇な珍客たち、個性的な同業者たちのこと。店主の掌中から売れていった本、また目前を通り過ぎていった宝物やら珍本の数々。ニセモノをつかまされた話、貴重な古いポスターをしまう時に破ってしまった話、子ども時代のコレクションの話など、ほんわかしたり恥を忍んだり。有名漫画家のサイン真贋では、大手漫画専門店が偽物と鑑定したが、店主はプライドをもって本物と主張。

 個人的には、同業物故店主の思い出にジーンとした。また、両親のこと、連載中に亡くなった弟さんのことなど、店主の素顔のほんの一部分を知った。

 装丁 TERRY JOHNSONBILLY BLACKMONN。
 本体の写真は「穴門商店街」の風景。かなり妖しい街に見える。
 私がもらった宣伝ハガキもかなり危ない。写真の缶バッジは本書の限定品おまけ。

ちんき堂ニュースを。https://chinkido.hatenadiary.org/

(平野)
 海文堂さよならセールにも言及。店主は海文堂で初の古本イベントをしてくれ、「ちんき堂棚」を出し続けてくれた。改めてお礼を申し上げる。
 8.24 臨時休業日ばかりに行っていた古書店、ようやく目当ての本を手に取れた。竹内明久『犬の目、人の眼差し』(波止場通信社)。著者はフリーマガジン「yurari」編集(現在休刊中)のかたわら切り絵制作。故成田一徹に師事、元町高架下商店街のお店や店主たちを中心に神戸のあちこちを描く。個展間近。
 お節介で余計なお世話は承知の上で、新聞社GFに「神戸本」紹介メール。うっさい・うっざいヂヂイ。

 8.27 ゴロウさんの「ほんまに」取材に同行。阪神甲子園駅北側、住宅街というよりお屋敷町で店主一人で運営する「リトル書房」がある。この9月で開業3年を迎える。児童書を中心に文芸書・実用書など、店主が内容を吟味して発注、品揃えする。店主のお人柄でしょう、10坪の店内は明るく、棚は整頓され、優しい本屋だと感じる。コミックも絵本も子どもたちには自由に読ませてあげている。椅子があちこちに置いてある。絵本読み聞かせ会や大人の塗り絵体験教室など地域の方々が集まる場所になっている。詳しくは「ほんまに」20号(いつ出るんだ?)をお待ちください。前から気になっていた本が「こっちこっち」と呼ぶ。

 8.29 午前中は「みなと元町タウンニュース」原稿。花森書林に寄って、元町商店街事務所に原稿届けて、イワ編集長と雑談。銀行周りして買い物すませて帰宅。