2023年1月26日木曜日

木挽町のあだ討ち

1.25 訃報、南海ホークスの強打者、門田博光。

 寒波、神戸に雪積もる。私鉄・JR不通。市営地下鉄で行ける所まで行って、徒歩。何度も滑りながら出勤。今日は掃除よりも雪かき。帰宅時は電車動く。

 訃報、本の雑誌・目黒考二(ペンネーム、北上次郎、藤代三郎)。

「週刊 ザ・テレビジョン」が3月で休刊、月刊と統合。

1.26 寒い。ギャラリー島田DM作業。1階と地下を行き来するのに上着なしでは震える。

 

 永井紗耶子 『木挽町のあだ討ち』 新潮社 1700円+税



 木挽町は江戸の芝居町。2年前ここで仇討ちがあった。元服前の少年・菊之助が父の仇を討った。仇は父の下男・作兵衛。父を殺し逃げた。博徒になっていた。堂々の真剣勝負のすえ、作兵衛の首を取った。

菊之助の縁者が参勤交代で江戸に来た。木挽町を訪ねて、目撃者たちに話を聴く。いずれも芝居関係者。小屋の呼び込み・木戸芸者の一八、立師・与三郎(元武士、戦い場面の振り付け)、女形兼衣装整備担当・ほたる、小道具・久蔵(無口なので女房お与根がしゃべる)、戯作者・金治(旗本の次男坊)。

 彼らの話から少しずつ事件の裏側が見えてくる。父は乱心して菊之助に刃を向けた、作兵衛は忠義者、父は家老の汚職を暴こうとして逆に濡れ衣を着せられた、父は自死、仇討は家老一味である叔父の策略……。何が真実か、陰謀か。菊之助が作兵衛を逃がした。斬りたくない、斬らねば武士の本懐が果たせない、父の汚名も晴らせない。

 縁者は目撃者たちそれぞれの経歴も聴く。皆辛酸を舐めてきた。菊之助の苦しみがわかる。金治が語る。彼は菊之助の父母とがあった。

……俺も含めてこの悪所に集うやつらはみんな、世の理ってやつから見放されて、はじき出されて転がり込んで、ようやっとここに落ち着いた連中だ。それが、まだ武士の理を引きずりながら仇討を立てているあいつに、どういうわけか心惹かれていく。〉

 苦悩する菊之助を助けてやりたい。さあどうする?

 読み進むうちに筋書きを予想(作兵衛を殺さずに治めると期待)。けれど、読んでしまうのが惜しくなり、読んでは閉じ、また手に取る。

 書名が「仇討ち」ではなく「あだ討ち」。作品内では「徒討ち」とも。チャンバラ劇ではなく人情噺。

(平野)