2025年10月9日木曜日

南方ノート・戦後日記

 10.5 「朝日歌壇」より。

〈図書館で借りた曽根崎心中のしおり紐だけ赤くて長い (高山市)西春彦〉

10.6 ヂヂイ寝言うるさい、らしい。夢の中でしゃべっているのを覚えていることもある。今朝がたの夢は本屋開店前にお客さんがいっぱい入ってきて、「まだです、時からです」と断わっている。それでもどんどん入ってくる。その寝言らしい。

 孫電話。妹は人形遊びに夢中。姉としりとり、負けず嫌い、ヒントを言われるのはイヤ。

10.7 ヂヂイぼけぼけ進行中。呆れた家人は買い物と晩ご飯用意のメモを書いてくれる。メモを見ても間違えるし、メモを持って行くのも忘れる。

10.8 BIG ISSUE512。特集「人間と薬物。そのつきあい方」、世界中に広まった薬物「ビッグスリー」は、アルコール、タバコ、カフェイン。

 大佛次郎『南方ノート・戦後日記』(大佛次郎記念館編、未知谷、2023年)読む。

「南方ノート」は大佛が1943(昭和18)年11月から翌年1月末まで同盟通信社から派遣されて東南アジア各地を取材した時のノート。この時期、同地域は日本軍の進撃がほぼ終わり平穏と言えるが、戦争全体で見るとミッドウェー、ガダルカナルで敗れ、劣勢。大佛は現地の飲食を楽しみ観光し、優雅に見える。原住民向けの文化講演や座談会に出席し、ラジオ放送の原稿を制作し、学校を訪問する。従軍作家ではないが、軍政に協力しなければならない。大佛は冷静に現地住民の声(日本統治の不安)に耳をすませ、アメリカの日本向け放送を聴いて日本劣勢の情報を得ている。

「戦後日記」ではあまりに忙しい生活を綴る。雑誌・新聞の連載多数、経営する出版社のこと、文壇付き合い、政府関係、近所・親戚付き合い、金の相談などなど。ストレス解消はスポーツ、旅行。ついつい深酒になり健康不良。ただ偉いのは、明るい時間に集中して執筆しているし、いい酒を飲んでいる。同時期売れっ子だった「無頼派」たちは危ない酒と薬物で身体を痛めつけていた。

良い作品を書きたい(連載中の作品は評判よし)、もっと本を読みたい、旅行帰りの車窓から田植えの様子を見て、酒量を減らす決意。

「よい仕事をするのは高貴な義務だし責任だと昨の車窓田植ゑのひとを見つゝ単純に感じたり 外に甘へてはいけないのだ 評判がよいだけに強く緊める必要あり」




(平野)先日紹介した『植民地時代の古本屋たち』、10月下旬に増補新装版出来。