2026年7月25日土曜日

それからはスープのことばかり~

7.22 猛暑を通り越して酷暑。まだ倒れないとは思うが、ヂヂイなりに注意して労働に励む。

7.23 花森書林店主に製本家さんに言づけ依頼。店主、8月は出張販売で大忙しで、店舗は84日から26日までお休み。

7.24 大急ぎで午後の職場を掃除して、管理人グループの会議出席。開始時間ギリギリ到着。暑さのため体調不良で欠席者あり。仲間と年数回顔を合わせるのは面白いが、会議そのものは疑問。

 

吉田篤弘 『それからはスープのことばかり考えて暮らした』 中央公論新社 2300円+税



〈月舟町〉シリーズ二作目。2004年から2005年『暮しの手帖』連載。2006年同社から単行本出版。2009年中公文庫。本書では著者と中央公論新社編集者の内緒話を追加。その編集さんは雑誌連載開始直後に将来の中公文庫での出版を願ったそう。

月舟町の一つ隣の駅に越してきた青年オーリィ、いまは無職。路面電車と隣駅にある古い映画館が目当てでここを選んだ。「隣」というのがいいらしい。いい大家さん=マダムのアパートがみつかり、サンドイッチ店トロワ(父・安藤さん、子リツ君)の常連になる。映画館=月舟シネマは古い映画をかける。オーリィは50年ほど前の脇役女優(あおいさん)のファンで、彼女の出演作品を見続けている。長くて十数分、短いと秒単位の出演なのに。オーリィは映画の脚本家になりたかった。月舟シネマで一緒になる初老女性持参のスープが気になる。離れた席なのに匂いが漂ってくる。小さい頃の野球遊びから帰ってきた食卓が思い浮ぶ。映画もポップコーンの味も頭に届かず、お腹が鳴る。彼女に聞こえてしまったのか、「ちゃんと御飯を食べないと」と声をかけられた。

〈僕は食べ残したポップコーンを手にしたまま、依然として空腹を感じながら、それからしばらくスープのことばかり考えていた。〉

オーリィはトロワで働く。駅前の喫茶店の新メニューにお客が流れ、オーリィがスープメニューを開発することになる。オーリィは映画館の女性とラーメン屋でもたびたび会い、リツ君の同級生の祖母とわかる。彼女をあおいさんだと思い込み、「あおいさんだということにする」。

あおいさんからスープのレシピを教わる。「ただのスープ。何度も味見して、精一杯おいしくなるようつくったけど」。オーリィは試作を繰り返し、みんなに味見をしてもらう。

〈何よりこれは、あおいさんのスープで、だからこそ口にした誰もが驚き、そればかりでなく、それぞれの記憶に何かが届いて、何かが立ち上がり、記憶の中にいる人たちまでもが「おいしい」と笑みを浮かべている――そんな錯覚があった。(中略、あおいさんにも味見をしてもらう。)/「わたしの味と違うのね」/どきりとするようなことを、まるで映画のセリフのようにさらりと口にした。/「駄目でしたか」/「そうじゃないの。あのね、これはもう、あなたのスープなのよ。あなたの――というより、あなたたちのスープね」〉

登場人物たちは亡くした人のことを思い続けている。オーリィのスープのよってそれぞれの記憶が呼び覚まされる。

(平野)