2022年12月31日土曜日

枯れいそぐ

12.30 家族が増えると当然洗濯物が増える。狭い物干し場は満タン、なかなか乾かないのだけれど、うれしい。

 訃報、サッカーの王様・ペレ死去。

 年末用の本、黒川博行『連鎖』(中央公論新社)に取り掛かる。著者得意の警察バディ物。

12.31 訃報。建築家・磯崎新。ジャーナリスト・矢崎泰久。ご冥福をお祈りする。

「波」1月号の「掌のうた 俳句」(小澤實 選・解説)から。

〈枯れいそぐものに我が足我が手あり 河瀬無窮亭〉

「山の木々の葉も落ち、野の草は枯れ朽ちてゆく。その中にあって、ことに枯れ急ぐものに、わたしの足や手がある」

 無窮亭(18881971年、本名・虎三郎)は呉服商人、茶人。古美術を愛好し、愛酒家でもあった。

 


 体力の衰えは認識している。今年の初め頃から手指先・足先に霜焼けができるようになった。私の身体も確実に枯れてきている。来る年も霜焼けが増えそうだ。

 この年末年始は孫と楽しく過ごさせてもらっている。

 皆様よいお年をお迎えください。(平野)

2022年12月30日金曜日

辞書編集、三十七年

12.29 毎日賑やか、お祭り騒ぎ。孫姉妹のおかげでヂヂババも大張り切り。パパさんも仕事すんで来神。さらに姉妹のテンションが上がる。昼寝短いから早く寝る、よって朝早く起きる。

 神永暁(さとる) 『辞書編集、三十七年』 草思社文庫 

900+税  初版は2018年、同社より。



 著者は尚学図書、小学館で辞書編集一筋。『日本国語大辞典 第二版』『現代国語例解辞典』など多数担当。定年退職後も『日本国語大辞典 第三版』編纂に参画するほか、執筆活動、教育活動を続けている。

なぜ辞書編集者になったか、ゲラ読み、辞書編集の面白さ、新しい企画、研究者・専門家との関係、辞書とむしょ、辞書と方言、文献例・誤用、読者からの質問などの交流、印刷・製本、辞書引き学習、辞書編集以外の活動など、辞書編集の苦労と喜びを伝えるエッセイ集。

〈駆け出しの辞書編集者だったとき、上司に言われて深く印象に残っていることばがある。「辞書は発刊と同時に改訂作業がスタートする」というものである。多くの辞書は改訂版を刊行することが前提となっているが、次の改訂に向けた作業は発刊と同時に始まるので気を許すなという意味だ。だが、長年辞書編集にかかわってみると、発刊よりもさらに前、ゲラを校了にしたときから改訂作業は始まるという方が実情に近い気がする。〉

 無限に続く作業。

(平野)日本語学者「林大」(19132004年)と「林巨樹」(19242012年)。おふたり共「はやし・おおき」。小学館辞書では、前者は『日本国語大辞典』、『現代漢語例解辞典』、後者は『現代国語例解辞典』。

2022年12月27日火曜日

名短篇ほりだしもの

12.24 ヂヂババへのクリスマスプレゼントは孫来神。ご近所さんも楽しみにしてくださる。

12.25 朝買い物。新神戸駅まで孫お迎え。ヂヂババ、ルンルン。妹はLINE電話で見ているヂヂと同じかどうか判断しかねたようだが、すぐに慣れて、一安心。

12.26 訃報。渡辺京二。ご冥福をお祈りする。

 娘の横浜みやげ、東急沿線のフリーペーパー「SALUS(サルース)」1月号。特集「書店主たちの読書案内」。沿線の6書店。

 


12.27 建築家・安藤忠雄が寄付した児童図書館「こども本の森 神戸」。娘が事前に予約していて、付き添いで入館。多くはお子さん連れのファミリー。若いカップルや年配男性も。90分の入れ替え制。妹も姉と同じように本を開くが、上下逆さま。



 私事、震災コーナーに拙著を置いてくださっています。ありがとうございます。

 

 北村薫 宮部みゆき編 『名短篇ほりだしもの』 ちくま文庫 2011年初刷

手持ちは2020年第5



 宮沢章夫「だめに向かって」「探さないでください」 

 片岡義男「吹いていく風のバラッド」より『12』『16』 

 中村正常「日曜日のホテルの電話」「幸福な結婚」「三人のウルトラ・マダム」 

 石川桂郎「剃刀日記」より『序』『蝶』『炭』『薔薇』『指輪』 「少年」 

 芥川龍之介「カルメン」 

 志賀直哉「イズク川」 

 内田百閒「亀鳴くや」 

 里見弴「小坪の漁師」 

 久野豊彦「虎に化ける」 

 尾崎士郎「中村遊郭」 

 伊藤人譽「穴の底」「落ちてくる!」 

 織田作之助「探し人」「人情噺」「天衣無縫」

  ヂヂが初めて知る作家は、中村正常、久野豊彦、伊藤人譽(ひとよ)。

 中村は女優中村メイコの父。ユーモア小説。

 久野は経済学者。中村武羅夫、吉行エイスケと「近代生活」創刊。

伊藤は室生犀星に師事。戦前芥川賞候補になったが、係りのミスで選考委員全員に作品が渡らず落選したそう。

変わり種は石川桂郎、俳人。理髪店を営む。

(平野)

2022年12月24日土曜日

とっておき名短篇

12.21 仕事休み。大阪あべのハルカス美術館「アリス へんてこりん、へんてこりんな世界」。他に用事ないので、まっすぐ帰る。

電車内の伴は、『パンデミックの時代に』(ギャラリー島田、頒価300円)。ギャラリー毎月発送の通信に連載。コロナ禍の芸術家、支援者ら、ギャラリーと縁ある人たち28名、それぞれの活動、考え。

訃報、俳優・あき竹城。ご冥福を。

 


12.22 図書館、西村貫一調べ。1939(昭和14)年4月貫一がゴルフ談義を新聞「神戸日日夕刊」に寄稿。貫一がまとめた『西村旅館年譜』に記事コピー掲載。初めて知る新聞紙名、ネット検索に引っかからない。司書さんに訊ねたら調べてくださった。確かに存在した。1925(大正11)年楠町7丁目で創刊、4ページの夕刊紙。のち栄町に移る。「日本経済新聞」に改称。1940(昭和15)年政府による新聞統廃合で廃刊。さすが調べる・探すのプロ、本や資料を駆使。ありがとうございます。

 午後、花森書林に寄って、食品買物して、本屋さん。肝心のパン買い忘れ。出かける前に用事を確認したのに、ヤレヤレ。

 年賀状作成。おバカ賀状、ヂヂ来年70歳。

■ 北村薫 宮部みゆき編 『とっておき名短篇』 ちくま文庫 2011年初刷

手持ちは20218



 穂村弘「愛の暴走族」 蜂飼耳「ほたるいかに触る」 川上弘美「運命の恋人」 塚本邦雄「壹越」 飯田茂実「一文物語集」より『0108』 戸板康二「酒井妙子のリボン」 深沢七郎「絢爛の椅子」「報酬」 松本清張「電筆」 大岡昇平「サッコとヴァンゼッティ」 岡田睦「悪魔」 北杜夫「異形」

 恐怖小説集ではないけれど、怖い話が集まった。

 馴染みのない作家2名。

「飯田茂実(しげみ)」は1967年生まれ。作品は不思議な超短篇。星新一のショートショート、足穂の『一千一秒物語』ともちがう。ダンス、音楽、文学、美術など「様々な芸術ジャンルを体現しながら統合していく活動」。

〈妻子を捨てて国外逃亡してきた男が、毎晩隠れ家の周辺をうつむいて散歩しながら、「あの角を曲がると向うから妻たちが歩いてくる、今夜こそ」と胸を高鳴らせている。〉 

「岡田睦(ぼく、資料によっては、むつみ)」は以前に林哲夫さんブログで老人小説の紹介があった。1932年生まれ。消息不明らしい。

(平野)

2022年12月21日水曜日

邂逅の孤独

12.17 「朝日新聞」別刷り「be on Saturday」に目に痛い記事あり。「『片付けられない人』の対処法は」、人生相談「悩みのるつぼ」は「家中に母の本 収集癖直すには」。

12.18 「朝日歌壇」より。

〈耳鳴りを波音で消し本を読む吾の片方(かたえ)に夫はハゼ釣る (広島県府中市)内海恒子〉

12.20 午前中墓参り。寒さは幾分まし。北国豪雪のニュース。

帰宅してギャラリー島田に向かう。途中、生田神社参拝して新年絵馬写真。

ギャラリーDM作業は新年の案内。このところ仕事や雑用で欠席続きだった。ご無沙汰を詫びる。

 臼田捷治 『邂逅の孤独 地霊と失われたものと』 幻戯書房 1500円+税



 臼田は元美術雑誌編集長。本の装幀、デザイン、文字などの分野で執筆活動。本書は青春時代の恋を題材にした小説。偶然の出会いから、上京以来過ごした土地との縁を語る。

〈現実は夢よりも上手だった。/まるで回り舞台が転じて、再度同じ演目を目の当たりにしているかのようだった。あのひとと思える熟年女性が私の真正面の席に着いたのだ。十余年前と同一のシーンの再演だった。〉

 学生時代に恋した女性。就職して交際するようになり、プロポーズするが実らなかった。35年後、その女性と中央線快速下り電車の中で偶然「邂逅」した。彼女は気づかない。本人かどうか自信がない。声をかけなかった。さらに10余年後、また同じ電車内で見かける。地理的には学生時代から暮らし、働いた場所。土地の《田の神》の引き合わせか。彼女は本を読んでいる。

〈年齢から察するに老眼鏡が必要ではないだろうか。でも女性はメガネなしだ。さすがに目と手にする本の距離は若年の者よりは離れていて膝の上に置かれており、ちょっと無理しているようにも見える。実際、読むのにややつらそうな気配が伝わってくる。〉

 洋書か? かろうじて和文が見える、翻訳書? 幻想文学か人文関係か?

〈片手にしおりを挟み込むようにして器用に読み進んでいることも、読書にふだんから慣れ親しんでいることをうかがわせる。そのしおりは何も印刷されていない半透明の薄いアクリル製のようだ。あらかじめ本に挿まれていた、版元がサービスで付けたそれというよりも、女性が常用している特別あつらえものという感じ。時折、しおりから離れた手がアゴに行き、軽く添えられる。その仕草にもデリケートな味わいがある。まるで京都・広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像のよう。〉

 短く儚い遭遇、〈失われたもの〉がよみがえる。

 

(平野)表紙真ん中のおじぎしたような絵のような記号、「約物」というそう。文中の文節に用いられている。1970年代に朝日新聞で使っていた。記号ふたつをつなぐ点点(ドット)と合わせ、本書のテーマ、〈失われたもの〉〈地霊〉〈邂逅〉を表わす。



2022年12月17日土曜日

井上ひさし うま 

12.14 会社の会議、管理人仲間が集まるのは3年ぶり。この間退職した先輩あり、新入社の人もあり。指折り数えれば、私は勤務丸8年。

 PR「熱風(GHIBLI)」(スタジオジブリ)12月号津野海太郎「もうじき死ぬ人」連載開始。

〈八十代も半ばになると、老人として生きていることに飽きてくる。飽きるというか、「このまま老化のつづきとして、この世から淡々と消えていくのも、ちょっとなあ」という揺れのごときものが、どこからともなく生じてくるのです。〉



12.15 冷たい! 冷え込みました。今年もあと半月。世間の皆さんは忙しい。

BIG ISSUE445、おまけポストカードいただく。特集は「私のサードプレイス」。家でも職場でもない、第三の居心地の良い場所。



「朝日」夕刊、季村敏夫による安水稔和追悼記事。



12.16 孫電話。妹は絵本めくってとキーボード演奏して動き回る。姉は自分で髪を三つ編みにするのに一生懸命。

家人「神戸に来たらヂヂの頭も三つ編みしてあげて」

姉「ヂヂ、毛ない」

人の髪の毛で漫才するな! ヂヂバカちゃんりん。

 

■ 井上ひさし 『うま――馬に乗ってこの世の外へ――』 集英社 1700円+税



2021年末、井上ひさし未発表の戯曲が見つかり、テレビ番組で紹介された。井上が学生時代に小さな劇団の演出家に渡していたもの。

戦国時代羽前の国の小さな村が舞台。主人公・太郎は死期の迫った老母と馬1頭を連れて村にやって来る。地主に、黄金の糞をする、と言って馬を売る。地主は嘘とわかって、馬を殺し、太郎に暴行、金を取り返す。太郎は馬の皮と死んだ母親の身体を使って、地主・村人から金をまきあげる。

東北の伝説・民話をもとにした悪漢物語。地主に逆らい、母のことばや観音の説教にも従わず、自分の力のみで世間に立ち向かう。井上自身の青春の姿だろう。

(平野)

2022年12月13日火曜日

天使も怪物も眠る夜

12.11 「朝日歌壇」より。

〈荷風読み独り飯食う夕暮の淋しきことは子らに語らず (姫路市)中塚裕久〉

 年賀状準備。うさぎの絵を探すといろいろ本はあるけど、そのまま使う訳にはいかず、本棚に戻す。かわいい孫の写真も自粛。

12.13 訃報、俳優・佐藤蛾次郎、歌手・水木一郎。ご冥福を。

 図書館、「西村貫一」調べ。年末から来年1月末まで休館になるので、行っておかないと。

 

 吉田篤弘 『天使も怪物も眠る夜』 中公文庫 840円+税



 初出「小説BOC」(2016年~2018年)、単行本2019年中央公論新社より。8組(9人)の作家がルールを決めて古代から未来までつながる物語を共作(競作)する〈螺旋プロジェクト〉の一作。全部読むべきでしょうが、怠けヂヂは本書のみでご勘弁を。

 近未来の東京は壁によって東西に分断され、慢性的な〈不眠の都〉。人びとは眠りを求めていた。睡眠ビジネスがトップ企業。「面白くない小説」がどんな睡眠薬より効き目があり、「面白い小説」は発禁、焚書の対象。睡眠コンサルタント・フタミシュウは極秘プロジェクト〈王子〉に参加。過去に作られた映画「眠り姫の寝台」とその脚本の存在を知り、資料室の谷口さんに相談。グリム童話「いばら姫」が蘇る。

「眠り姫」は存在するのか、彼女は目覚めるのか。

(平野)多くの登場人物がどうつながるのか、シュウの会社は「8ドリーム」、8人の王子で八王子、酒「ゴールデンスランバー」などなど、著者の仕掛けがいっぱい。