9.25 旧植民地の古本屋を取り上げたり、上海の「内山書店」のことを書いた本はあった。
日比嘉隆(ひび・よしたか)『帝国の書店 書物が編んだ近代日本の知のネットワーク』(岩波書店、5400円+税)。戦前大日本帝国勢力圏に進出した日本人経営の書店(新刊・古書)と本・雑誌を運んだ取次業者の歴史を調べる。戦争勝利によって日本の領土となった場所、日本の軍隊が進駐して占領した場所、海外に移住した日本人のコミュニティもあり、事情はいろいろ。領土には日本人子弟だけではなく現地住民の日本語教育のための教科書が必要だし、在外日本人の娯楽、教養、学術のために雑誌・書物は欠かせない。海外で本を売った人、運んだ人、買った人。モノであり文化そのものである本の価値。文化・知の産物である本と国家権力の相性、たとえば教科書供給、統制経済と流通の合理化。そして経済活動としての本屋・流通業。様々な視点から書店・流通を考える。さらに母国敗戦による人の引き揚げ、そして本たちのその後も。索引含め400ページ超。
著者は名古屋大学大学院教授、専門は近現代日本文学・文化、移民文学、出版文化。調査・研究しながら身近だった「街の本屋」のことを考えていた。対象の「旧外地」を訪れて古い地図をたどり、現在の姿を眺め、その土地の本屋を感じようとした。
〈だが、私はこの本を、かつてあった本屋の黄金時代への挽歌として書いたつもりはない。本書を通じて私が再確認したのは、読むことをめぐる人間の渇望の強さである。書店主や出版人の商魂のたくましさ。娯楽だろうが知識だろうが何か読まずにいられない人たち。いま街の本屋の生き残りは厳しいが、それは読むことの中心地が、ずれたことの余波であるはずだ。読むことをめぐる生態系は、変化のただ中にある。本屋の過去を考えながら、私はこの国の本屋の行く末もまた、考えている。〉
休日は買い物担当。家人に指定されたモノ、自分で判断して買うモノ。後者が問題。まだ冷蔵庫に在庫があるのに買ってしまうこと多々。家人に叱られる。
9.27 新泉社・ヤスさんから新刊書、チョン・ジア『資本主義の敵』をいただく。ありがとうございます。思想系の書名ながら、同社の韓国文学シリーズ。神戸の画家イシサカゴロウが挿画・扉絵を担当している。紹介は読んでからします。
久方ぶりに花森書林。8月は外部イベント大忙しの由。9月は私が出不精。
9.28 「朝日俳壇」より。
〈ぐりとぐら読んでと子らの星月夜 (新潟市)田丸信子〉
(平野)