2017年5月3日水曜日

編集者の生きた空間


 高橋輝次 『編集者の生きた空間 東京・神戸の文芸史探検』
 論創社 2700円+税
 
 

 高橋は1946年生まれ、元創元社編集者。現在フリーで、古書探索・編集体験から得た文学話をまとめている。本書では〈編集者〉がテーマ。

目次
第Ⅰ部 編集部の豊穣なる空間  (砂子屋書房編輯部、「三田文学」編集部、河出書房編集部の面々など)
部 編集者の喜怒哀楽  (彌生書房社長、ある児童文学編集者、創元社編集者、中央公論社編集者など)
部 神戸文芸史探検抄  (エディション・カイエ、「航海表」、「少年」など)
部 知られざる古本との出逢い 

「あとがきに代えて」で、「印刷所や製本所の人たちの地道な働き」に着目している。本書にも「文芸と密接にかかわった印刷者たち」が数多く登場するし、野口冨士男も「印刷所を通してみる文壇史」に言及していることから、出版史を見直す新しい視点として「印刷所」を提案する。
 編集者から作家・詩人として活躍した人たちがいる一方、高橋は世に知られていない編集者たちの仕事にも光を当てている。また、出版社の外観、編集部という空間にも目を向ける。そして、神戸の文芸史も。
 本書は「古書を通して見た戦前、戦後の編集者の群像」と言える。
《今回も改めて思ったのは、古本探索の旅には限りがないな、ということである。私の場合、なぜだか分からないが、ひとつの原稿を書きおえてまもなく、それに関連する新たな文献がなおも次々に見つかってゆくという経験に恵まれている。そこに不思議なエネルギーが集中するのだろうか。(後略)》
 結果、「追記」「註」という形で原稿が追加されていく。

(平野)
『ほんまに』のこと、海文堂のことにも触れてくださっている。私が海文堂の本を書いたとき、お骨折りいただいた。
 こういう資料性の高い本には索引がほしいなあ。