2018年5月17日木曜日

小村雪岱随筆集


 『小村雪岱随筆集』 幻戯書房 3500円+税

真田幸治編
目次
序のかはりに  初めて鏡花先生に御目にかゝつた時
一、装幀と挿絵
二、女
三、舞台と映画
四、町と旅
五、雑
六、泉鏡花と九九九会




 計74篇収録。
 小村雪岱(18871940年)、日本画画家、装幀家、舞台装置家。資生堂で商品デザインや広告の仕事も経験。生誕130年、故郷川越市で記念の展覧会があった(3.11終了)。
 雪岱は美術学校の友人に勧められて鏡花を愛読していた。
「明治四十二年の夏」、雪岱は泉鏡花に「誠に誠に思ひがけもなく」会うことができた。九州の医学者が雪岱の先輩に歌川豊国の模写を依頼するが、都合つかず。代わりに雪岱が宿に通い模写。医学者と鏡花は夫人を通して親交があり、鏡花が宿に来た。
 雪岱は鏡花の家を訪ねるようになり、そこで編集者に鏡花『日本橋』の装幀を依頼される(鏡花が指名)。鏡花を中心にした会に参加すると、その発起人に舞台装置家として誘われる。また、作家から新聞連載の挿絵を頼まれる。雪岱の結婚を世話したのも鏡花だし、画号「雪岱」も鏡花による。

出会いの場面。
〈その時の泉先生の第一印象は、「男にも斯ういふ美しい人があるのか……」と深く感に打たれたことです。今でも綺麗な方ですがその時の先生の綺麗さは又格別で、色の白い美男子で、而も何処かに気骨稜々たるところがあつて、私は只もう恍惚となつたものであう。〉「教養のある金沢の樹木」(「演芸画報」第27巻第9号、昭和891日)

(平野)