2019年7月13日土曜日

ベストセラー伝説


 本橋信宏 『ベストセラー伝説』 新潮新書 760円+税

 1956年生まれ、ノンフィクション作家。
 ベストセラー本、ロングセラー学習参考書、100万部突破雑誌など、昭和の出版物ヒットの秘密・裏話を関係者たちに取材。創業者たち、歴代の編集者たち、独自の営業戦略など。



目次
1章 「冒険王」と「少年チャンピオン」
2章 「少年画報」と「まぼろし探偵」
3章 「科学」と「学習」
4章 ポプラ社版「少年探偵シリーズ」
5章 「平凡パンチ」と「週刊プレイボーイ」
6章 「豆単」と「でる単」
7章 「新々英文解釈研究」と「古文研究法」「新釈 現代文」
8章 「ノストラダムスの大予言」

「はじめに」で著者が、なぜ手塚治虫「ブラック・ジャック」は「少年チャンピオン」で連載されたのか、と疑問を呈していて、その答がある。「漫画の神様」に向かって罵声を浴びせられる編集者がいた。70年代初め、手塚は極度のスランプ状態だった。虫プロの倒産があった。小学館、集英社、講談社の雑誌に作品が掲載されなくなった。
「おいっ! 手塚先生の死に水は俺たちがとってやろうじゃねえか!」
 鬼編集長の一声で決まった。彼が起用したのは手塚だけではなかった。「過去の人」「失速しているベテラン」に発表の場を与えた。
 8章には予言本「ノストラダムス」と関係ないような女性週刊誌や出版元誕生、カッパブックス・ノベルスベストセラー連発のドラマがある。小松左京「日本沈没」(光文社カッパノベルス)も同じ年のベストセラー。五島勉は「女性自身」のライター、その彼がなぜ「ノストラダムス」を書いたのか。五島にもインタビューしている。五島も小松も、両者を担当した編集者も昭和一桁世代。

……この世代は10代の思春期のときに、親や教師が815日を境に180度主張を反転させた姿を目撃してきた。国家、体制に対してどこか不信感を持っている。/1973年の2冊の大ベストセラーも、いまの泰平を信じるな、という昭和一桁世代からのニヒルな覚醒の書ではなかったか。〉

(平野)
 私は著者よりつ3歳上だが、取り上げている書籍・雑誌体験が違う。「冒険王」「少年画報」は私より少し上の学年の人が読んでいた。私は「マガジン」「サンデー」世代。「まぼろし探偵」は連載ではなくテレビドラマと漫画単行本だ。「少年探偵」は確かに学校の図書室にあった。「パンチ」「プレイボーイ」も年上の雑誌だ。学参だと「豆単」「でる単」は使ったが、7章の3冊は触りもせず。「ノストラダムス」は読んだ。