2019年10月29日火曜日

うた合わせ百人一首


 北村薫 『北村薫のうた合わせ百人一首』 新潮文庫 
550円+税
 藤原龍一郎、穂村弘とのトーク〈歌人と語る「うた合わせ」〉収録。解説 三浦しをん。単行本は2016年新潮社より。



 古典の百人一首解説ではなく、現代歌人(近代も何人か)の短歌を北村独自の眼と感覚で二種ずつ選んで組み合わせる。同じ歌人の歌や関連する別の歌人の歌も紹介する。総数550首収録。
 ご存知のとおり、北村はミステリーを中心に発表している作家。膨大な読書量。単なる短歌愛好家の鑑賞ではない。プロの歌人とは異なる解釈をし、謎解きをする。

 三浦は、短詩系作家と散文作家のセンスの違いを書いている。短詩系の作家は「膨大な脳内データベース」を持ち、作家同士で批評しあう。それに対し、小説家は小説の内容を全文記憶していないし、作家同士論評しあう習慣があまりない。
 北村は自身で短歌を作らないものの、「膨大な脳内データベース」を持ち、小説家の立場で鑑賞・批評する。

「崩壊の調べ」のテーマで選んだ、
「ひとひらの雲が塔からはなれゆき世界がばらば らになり始む  香川ヒサ」
 北村解釈は、

……一字空けの歌は世にいくつもあるが、これは忘れ難い。当たり前に書かれていれば誰もが《ばらばらになり始む》と普通に読み、そのまま通り過ぎるだろう。だが下の句の七・七の切れ目に置かれた空白で、言葉が裂かれる。切られてみれば、その調べが必然のものとなり、この世も裂かれる。〉

 プロの歌人が驚いたのは、「バラバ」はキリストの磔刑に関連する、という指摘。

 花鳥風月を歌い、恋を歌う。僧侶が恋を詠んだり、男女が異性の立場になっていたり、想像力で物語を作っていた。古典の解釈は長年積み重ねられて、現代の解釈になった。現代短歌もさまざまな解釈が重ねられていく。作品はいったん発表されると、著者・作者の手から離れる。鑑賞者はさまざまな解釈をすることができる。でもね、文学や歴史の教養、それに想像力があれば解釈は広がり、楽しくなる。誤読があってもいい。
(平野)
 10.25 休みもらってお江戸。二子玉川で娘・孫と待ち合わせして、2歳誕生日お祝いランチ。蔦屋家電のキタダさんを訪ねる。ずっと雨、多摩川河川敷は泥が残る。ヂヂは皆と別行動、本郷のNR出版会。くららさん、やすきさんの仕事をじゃまする。ハルピン珍道中のお話を伺う。

10.26 3年ぶりの神保町ブックフェスティバル、晴れて何より。すずらん通りで娘・孫と待ち合わせ、父さんは本販売当番。京都キムラさんと遭遇。孫と児童書コーナー。息子も加わりランチ。孫はスポーツショップが流している音楽に合わせてダンスしたり、どんぐり拾い集めたり。

10.27 神保町フェス徘徊。すずらん通りブースで吉さんに挨拶。古書店でコーべブックス出版句集、井伏鱒二、新刊バーゲンで池内紀。昼食はさくら通りでクラフトビールとカレー。東京堂書店店頭名物コーラス「神保町は本の街」を聴きながら、同店6階の「造本装幀コンクール」展示鑑賞。ヂヂ、満喫。