2022年11月7日月曜日

明治文学の彩り

11.4 訃報、イラストレーター・矢吹申彦、福音館書店・松居直。ご冥福を。

「朝日新聞」朝刊神戸版に「のの様」登場。〈雑草もぐもぐ 花咲かウサギ 神戸の女性「相棒」と公園再生〉。「のの様」は現代思想の研究者、詩人(下の写真、水撒きしている人)。相棒スス(上の写真、雑草を食べ、土を耕す)と北野町の公園を備。

 


11.5 センタープラザの古本屋さん清泉堂書店が元町通3丁目に移転する。12月オープン予定。

11.6 「朝日歌壇」より。

〈こころざし高き山根屋書店主の訃報の朝に彼岸花咲く (長野市)細野正昭〉

〈駅近く書店営み歌に生き沓掛喜久男氏逝きて閉じたり (長野市)栗平たかさ〉

 『明治文学の彩り 口絵・挿絵の世界』 

日本近代文学館編 出口智之責任編集 春陽堂書店 2400円+税



 20221月~2月に日本近代文学館で開催された展覧会を基に出版。小説作品と共に掲載sされた挿絵・口絵から明治の文学を見る。

 明治時代の小説でも多くは本(図書館、古本、文庫本など)やネットの青空文庫で読むことができる。でもね、新聞や雑誌に発表された時の挿絵や初版本の口絵などを見ることは難しい。

 たとえば尾崎紅葉は新聞連載時、自分で挿絵の原画を描き絵師に指示していた。日記にその記述がある。挿絵は場面を視覚化しただけではない。

……対話の時間的な長さを表現したり、人物同士の関係を象徴的に示したり、あるいは本文に記述されない場面を描き示したりと、本文との協働によって物語世界に広がりを持たせる効果を狙っていたのです。〉

 江戸の戯作者たちは文と絵の下絵を作成して、専門の職人たちが版下制作、印刷、製本した。明治になってもその慣習は続き、作家たちもそのなかで活動をしていた。

……文学の内容面では急激な近代化が進行しても出版印刷においてはいまだ江戸以来の慣習が続いている、それが新旧の文化的混淆期である明治という時代なのでした。〉

 カバーの絵は、永井荷風「歓楽」(「新小説」明治427月)の口絵。石川寅治画、多色摺石版。恋に悩む主人公が浅草を歩く場面。描かれている女性たちは恋の相手ではなく、通行人。

……若い女たちを「物淋しい心持」で眺めたという主人公の視線を再現し、その心情を視覚的なイメージによって伝えようとしたものか。〉

小説は絵がなくても読めるが、もともと絵がついていたのならいっしょに見て、読みたい。新聞・雑誌連載小説が単行本になるとき、挿絵はほとんど掲載されない。残念なこと。

(平野)