2023年3月16日木曜日

底惚れ

3.14 著名人の訃報続く。扇千景、伊藤雅俊、陳建一。ご冥福を。

 朝墓参り。墓石を拭いていて、石塔に頭をぶつけた。先祖のゲンコツか?

 呑み会、飲み会、のみ会……、ささやくような囀り、サイレンみたいな遠吠え、悲鳴のごとき嘶き、そろそろ復活の要望が聞こえてくる。酔いどれ皆の衆、もうしばし待て。

3.16 午前中図書館。西村貫一主宰へちまくらぶの雑誌「金曜」を少しずつ読んでいる。

BIG ISSUE451、表紙は「きかんしゃトーマス」。子どもたちと見ていた時代は人形アニメだった。今は2DCGだそう。



 いつもの本屋さん文芸書の棚、著者名50音順で並べている。「遠藤周作」「大江健三郎」に続いて、先ごろ亡くなった新興宗教教祖の小説。首をかしげる。

 

 青山文平 『底惚れ』 徳間書店 1600円+税



 202111月刊。柴田錬三郎賞、中央公論文芸賞受賞。

 小藩江戸屋敷、若いまま隠居させられた元殿様のお手がついた下女が宿下り、お払い箱。中間の「俺」が相模の村まで送っていく。藩から彼女に渡された金はわずか、しかも用人が中抜きしている。「俺」は藩のスキャンダルを不良の岡っ引きに売って彼女の金を増やしてやる算段。岡っ引きは藩を強請る。彼女は殿様との愛を大切に思い、「俺」を刺して逃げた。

 これ読んだで~、また同じ本を買ってしまったか~! でもね、前に読んだのは短篇集だったと記憶。本作は「その後」の話。

彼女は必死で殿様を守った。「俺」は彼女の一途さに感嘆し、「俺」に悪行をさせなかった恩人とも思う。「俺」は命をとりとめた。彼女が後悔し、罪の意識に苦しんでいる、と想像。お前は殺人者ではない、と何とか知らせたい。無差別殺人を決行して読売のネタになることも考えた。「俺」が選んだのは女郎屋の楼主。彼女が困窮して流れてくるかもしれない。「俺」を手助けしてくれるのは、苦界の謎めいた男ともうひとりの下女。

「底惚れ」しているのは逃げた彼女と殿様だが、「俺」にも「底惚れ」の相手がいた。

(平野)「俺」の女郎屋は報酬も衛生環境も働く女性に優しい。客である男性にも喜ばれ、繁盛。女性がやむを得ない事情で岡場処に身を落としても、一定期間で十分稼いで巣立てるように。