2023年5月11日木曜日

犠牲の森で

5.7 「朝日歌壇」より。

〈春休み校長文庫の返きゃくへ小学校はもうなつかしい (奈良市)山添葵〉

「歌壇」「俳壇」共、坂本龍一追悼入選多数。

 連休後半は雨。引きこもり。

5.9 週末孫たちに会いに行く。おみやげは絵本。一週遅れのゴールデンウィーク。



 元町原稿、西村貫一所有のマルクス書簡(1871.6.18付け)。友人のロンドンみやげ。パリ・コンミューン敗北後の第一インターナショナルと欧州各国政府対立の一端が伺える。貫一所有分は宛名不明だが、『マルクス=エンゲルス全集』には同年月日の別人宛書簡があった。内容も貫一所有分を補完するもの。図書館で『マル=エン全集』(第33巻、大月書店、1973年)を借りる。ちなみに貫一所有分は全集未収録。

5.10 「朝日新聞」にジュンク堂書店・福島聡インタビュー。「本屋がいまできること」。

デジタル版では2月に出ていた記事(有料、一部だけ読める)。

 古書善行堂から本届く。PR冊子、絵はがきも。ありがとうございます。


 

 菊間晴子 『犠牲の森で 大江健三郎の死生観』 

東京大学出版会 4800円+税



 東京大学に提出した博士学位論文に加筆。第12回東京大学南原繁記念出版賞受賞。

 大江作品は、死者、亡霊、犠牲になる獣・人間が大きな意味を持つ。死者を思う。恩師、近親者、文学者ら著名人、戦争・原爆の無名の死者たち。

〈大江健三郎の全キャリアを縦断する形で、「犠牲」のテーマと深く結びついたその死生観を分析〉

〈皮を剥がれた犠牲獣の亡霊。超越的存在と結びつき、自己犠牲的な死の現場ともなる聖なる樹木。それらのイメージを徹底的に追いかけ、丁寧に考察していくことで、大江健三郎というとても大きな存在の、全体像に迫ることができたのではないか〉

 大江文学の聖地=テン窪を探して、故郷・愛媛県名子町大瀬(旧大瀬村)を調査。大江家族、地元住民との交流、大江の友であり大瀬中学校を設計した原広司インタビューも。

 奇しくも大江逝去後すぐの出版となった。

(平野)