2023年10月17日火曜日

こうべ文学逍遥

10.15 「朝日歌壇」より。

〈図書館で雨情の詩集繙けば我がふるさとの「篠栗(ささぐり)」ありし (川越市)西村健児〉

「朝日俳壇」より。

〈小説の奥へ奥へと夜長の灯 (東京都)山口照男〉

〈『ハンチバック』読み終へし日の子規忌かな (三木市)矢野義信〉

10.16 毎月購読している出版社のPR雑誌4冊。すみずみまで全部読んでいるわけではないが、どの雑誌にも最後に読むと決めている連載がある。その最後を忘れてしまって、後で気づく。順番にページを繰ればよいだけなのに、何のこだわり? 

 

 野元 正 『こうべ文学逍遥 花と川をめぐる風景』 

監修・大国正美 神戸新聞総合出版センター 1800円+税



 著者は作家、造園家。神戸市職員時代に須磨離宮公園、しあわせの村、布引ハーブ園などの企画、設計、管理を担当した。監修者は神戸新聞社重役、郷土史研究家。

〈花と川、その二つのキーワードで神戸を舞台にした文学を読み解くと、どんな風景や作者の思いが見えるだろうか。〉(大国)

第1章「名作の舞台と花風景」

 梅と谷崎潤一郎、桜と水上勉、谷崎、菜の花と与謝蕪村、司馬遼太郎、蘭と山崎豊子、曼珠沙華と灰谷健次郎……

第2章「名作の舞台と川風景」

 芦屋川、住吉川と谷崎、石屋川と万葉集、処女塚伝説、湊川と横溝正史、妙法寺川と妹尾河童など。

 トアロードは日本名を「三ノ宮筋」というそう。外国人は居留地で仕事、北野町界隈を住まいとした。トアロードは通勤の道、買い物に行く道、散歩道。彼らは都市緑化を考えて、街路樹を要望。プラタナス、サルスベリ、ネムノキなどを植えた。

陳舜臣のエッセイから。

〈いまでもそうだ。顧客層が固定しているのか、この通りの商店街はおっとりしている。さるすべりの並木のすばらしかったトーア・ロードは、ショッピングの通りであるよりは、散歩道の性格のほうがつよかった。ぶらぶら歩きのついでに、買物をするといったところである。〉『神戸ものがたり』より。

 気候風土から伝説や文学が生まれ、また人が文学に自然を取り入れてきた。地球温暖化という現象がこれからの人と文学にどう影響するだろう。

(平野)