2014年7月28日月曜日

〈兵庫〉の民家


 広瀬安美 『〈兵庫〉の民家』 装幀 畑本久幸 自費出版 1974年(昭和491月刊

 朝日新聞兵庫県版に連載(1970.373.12、全190回)した「兵庫の民家」。
 広瀬(19181978、山口県生まれ、明石在住)はマンガ家で、異人館他神戸・兵庫の町並みを描いていた。民俗学や建築は素人。連載以前から全国の民家をスケッチ・撮影して、雑誌に発表し、展覧会を開いていた。新聞連載の話がきて、京都・奈良ならともかく〈兵庫〉は弱いと思っていた。しかし、長年の取材で他地域との比較検討ができたし、独自の表現技法が確立(1軒の家を全体図から細部まで何枚も描いて最後に1枚に組み立てる)できていた。






目次

民家について
地理的に見た兵庫の民家
屋根材料  葦葺、カラ葺、小麦葺、稲葺、笹葺、本瓦葺、桟瓦葺 ……
屋根型  入母屋、寄棟、切妻、かぶと造、大和棟、切落し、庇……
●入口  平入 妻入
棟飾り
縁起物
……
兵庫県下の国指定重要文化財民家および県指定重文その他
日本の民家遍歴

 広瀬の民家観。

……まず、その建物で人間が生活していることだ。いくら建築学的にすぐれても、人が暮らしていない建物はすでに家ではない。次に民家とは庶民の住まいとその付属建物(納屋、作業場、倉など)を指し、社寺仏閣その付属建物は一切含まない。武家屋敷も同様だが、特に身分の低い徒士級以下の武士の家は民家並みに扱っている。私はさらに民家といわれるものは原則として明治以前の建築物であることとハッキリ定めている。年代をどこにおくかがハッキリしていないと、民家を語る上でいろいろと混乱や不都合がおきてくる。……

「地理的に見た兵庫の民家」より

 瀬戸内海沿岸の播磨平野などの山陽東部は近畿中央低地と共に日本の文化先進地域で、農業の集結化、雰細化の著しい地域でもあるが、瓦葺化は進行し、本瓦葺きも多くみられる。草葺屋根は入母屋と寄棟が多く、瓦庇(シコロ)をつけている。山口県から福井県の飯郡(若狭西部)までの山陰海岸を含む地域は瓦葺が多く釉薬を用いた赤瓦が多く見られる。また雪止め瓦や北西風に対しての防護方法が講じられている。播但山地から福知山盆地にかけては草葺は入母屋が多く、栗の角材をつかった棟飾が分布し、石州赤瓦の分布東南限に当り、西日本随一の養蚕地域で、切落し屋根の二、三階建が但馬山間部にみられるのは養蚕農家の一典型である。これに対し丹波高原全域、三田盆地、能勢山地を含む地域の草葺は破風が大きい入母屋で、栗角材の棟飾は、丹波高原の特色で「ツノヤ」も分布し、柱にベニガラをぬる家も多い。……

(平野)
 村田社長からの借り物。