2014年7月9日水曜日

兵庫の詩人たち


 君本昌久・安水稔和 『兵庫の詩人たち 明治・大正・昭和詩集成』 神戸新聞出版センター 198512月刊

『神戸の詩人たち 戦後詩集成』の前の時代、戦前詩集成。一書=「無題讃美歌集」、詩人50人、全356篇。文学史に名を残す人、宝探しのごとく掘り出された人、学者、社会運動家ら多彩な顔ぶれ。
 巻頭に貴重な詩書・詩誌他資料写真。巻末に「兵庫・神戸=明治・大正・昭和詩年表」(18ページ)。

 光本兼一  兵庫運河 (「神戸の詩」より)

川のない神戸に
こゝへ来て川を見る

三日月が川面に映つて
油や木片で汚れたこの水の美しい紛飾
ところどころ禿げた白壁の倉庫
木材や俵を積んで百石舟が
四五艙その前に縛がれてゐる

〈こゝが神戸だらうか〉
何度もさう考へてゐると
洋装の女が風をなびかせながら
開閉橋を白く浮いて通つた。

 光本(191034)は神戸市兵庫区生まれ。印刷工のかたわら「神戸詩人」(第1次から3次)主宰。心臓麻痺で若くして亡くなる。病の苦悩を綴る詩もある。
 1940年、「神戸詩人」(第4次)は特高による天皇制打倒デッチ上げで14人が検挙された。「神戸詩人事件」。

(平野)