2016年4月16日土曜日

圭よ たつしやか


 『圭よ たつしやか  坂本遼詩集』 山本英孝編 大阪出版 19787月刊


 坂本遼(19041970)、兵庫県加東郡東条町生まれ。関西学院英文科で竹中郁と同級。在学中に草野心平の「銅鑼」に参加。1927(昭和2)年詩集『たんぽぽ』(銅鑼社)を自費出版、郷土の言葉で貧しい農民の姿を表現した。高村光太郎と室生犀星が高く評価した。兵役のあと郷里で農業。31(昭和6)年朝日新聞社入社。41年から45年兵役。戦後は社会部、学芸部、論説委員。詩は「歴程」同人、『たんぽぽ』に連なる作品や戦争体験を書いた。48(昭和23)年、竹中から児童詩誌「きりん」に呼ばれる。
 書名は手紙形式の作品シリーズから。〈おかん〉が大阪で働く息子に「圭よ たつしやか」と呼びかける。草野心平が「坂本遼を憶う」を寄稿。

「たんぽぽ」
《圭よ たつしやか
つめとうなつて あさ こおりをわつてちようずをつかふのがつろうてならん
おみい(・・・)を子もりにやろうとおもうが おまえはどうおもうど
こない大きいもんをあそばしといたらもつたいない
はよう返事をくれ (後略)》

〈圭〉は坂本自身、〈おかん〉は母。〈おかん〉は愚痴を書きながら、息子の心配をする。〈おみい〉は近所の身寄りのない子、子もり奉公に出るが失敗して帰される。〈圭〉は短い返事で、〈おみい〉を頼む、工場でケガをした、金送れ、と書く。〈おかん〉がまた書く。

おみ(・・)()とわしがまつとるさかい はようもどれ
うちのほうでは もう たんぽぽもさいとる
そないな いきうまの目をくりぬくやうな大阪がどうなるど》

〈圭〉の手紙も毎回〈おかん〉の身体を気遣っている。離れていても母子は思い合っている。
(平野)