2014年2月12日水曜日

黒川博行『破門』


 黒川博行 『破門』 角川書店 1700円+税

 黒川、2011年に週刊誌でグリコ森永事件の犯人にされた。笑い話ですまない。二審でも勝ったけど。

ナニワこてこてハードボイルド疫病神シリーズ。建設コンサルタント・二宮とイケイケヤクザ・桑原の腐れ縁迷コンビ。今回、桑原は詐欺師に組の金を取られ、本家筋が絡んで大きなトラブル。重傷を負い、破門か絶縁という最大の危機。

 そもそもは組長の知り合いから映画に出資話。桑原は幹部から「売れる映画」にせよと命令される。いつものように二宮が手伝わされる。

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「おれは建設コンサルタントです。そんな畑ちがいのことができるわけないやないですか」
 いままで桑原にはどれほどひどいめにあわされたことか。中国国境の豆満江では北朝鮮国境警備隊に銃撃され、東三国のマンション建設現場では基礎坑に埋められかけた。桑原に敵対するヤクザに監禁されてずたぼろになったことも一度や二度ではない。触らぬ神に祟りなし。たとえ火が降り地が裂けようと桑原には近づくまいと誓ったのに、いつもこの疫病神から近づいてくる。……
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 二宮、本業の稼ぎが減っている。シブシブながら巻き込まれるが、金は欲しい。詐欺師から金を回収しては分け前を要求する。

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「お願いですわ。このとおりです。稼ぎの一〇%、二百万円をおれにください。……こんなことはいいとうないけど、おれの今年の収入は百五十万に足らんのです。コンサルタントの看板もいつおろさなあかんか、ほんまにぎりぎりの瀬戸際ですねん」

「泣き言ぬかすな。栄枯盛衰、有為転変、生者必滅は世の習いやろ」

「なんか、難しい言葉をよう知ってますね」

「おまえのヘチマ頭とはな、出来がちがうんじゃ」桑原は耳のそばで指をまわす。……
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 「あべのルシアスの喜久屋書店」と「グランフロントの鞆乃屋書店」というのが出てくる。

(平野)
 岐阜新聞徒然舎さんが紹介されて、ついでに『ほんまに』のことも。ありがとうございます。