2014年6月20日金曜日

兵庫県文学読本


 『兵庫県文学読本 近代篇』 のじぎく文庫編・発行 1959年(昭和344月刊・会員配布

「のじぎく文庫」は、1958年郷土振興調査会(兵庫県、神戸市、神戸新聞社などで組織)の提唱で発足した会員制出版機関。「ふるさと兵庫」をテーマにして、発行点数は200を超える。現在は一般市販(神戸新聞総合出版センター)もしている。
 

 兵庫の各所について文人・学者たちが書いた文章。





序文 富田砕花

……三代文運の精粋、凝ってもってここに()らく機会をもった。と、いう、いささか古めかしい、型にはまった形容もあながち過当ではあるまい。字義通り百花斉放! まことに盛観というべきで、これはやがて兵庫県という風土そのものが具有するあらゆる意味での卓抜性が、たまたまよき伯楽を得て、われわれにもたらされた所産と素直に受取っていいのではなかろうか。(略)南は鳴門海峡から北は日本海沿岸におよぶ風土の多種多様性は、文字の風雲にのって天かける慨を見せるところのもの、おおよそはこの一巻にあつめ得たことを誇示し得ようか。……
 [神戸]
離愁(薄田泣菫)  神戸(上田敏)  「旅の絵」より(堀辰雄)  「海港詩人」より(丸岡明)  白い灯の匂う元町(岡部伊都子)  あの頃の私と彼等(石川達三) ……

[阪神]
与謝野晶子、佐々木信綱、梶井基次郎、小泉八雲 他

[丹波・但馬]
西脇順三郎、今東光、島崎藤村、志賀直哉、柳田国男 他

[播州]
和辻哲郎、椎名麟三、三木清、竹久夢二、寿岳文章 他

[淡路]
大内兵衛、伊藤整、林芙美子、伊良子清白 他

 
海霧  竹中郁

わたしの視野をさへぎる海霧よ
わたしの眼蓋をおさへる海霧よ
 
岬も見えぬ
帆も見えぬ
 
わたしの胸に靠れかかる海霧よ
わたしのこころに沁みいる海霧よ

水平線の彼方が見える
なつかしい海の噺がよめる
 
(平野)集められた文章は、多様な文化を持つ郷土の遺産。