2021年5月11日火曜日

神戸港内外商家便覧

 5.9 孫と遊んでいて、彼女もご機嫌悪い時がある。こちらもついつい怒ってしまう。ケンカする。で、また遊ぶ。おんなじラベル。

 先日花森書林で購入した本。旧家から出たそう。

 『神戸港内外商家便覧』 著述者兼発行人 廣川繁四郎 明治廿六年出版









当時の職業名鑑。全160ページ、広告16ページ。定価30銭。

茶商「放香堂」、牛肉「大井商店」、煎餅「亀井堂」、薬種「赤壁」(現在は写真材料)は今も続いている

工芸職人、医師、弁護士から寄席・芝居小屋など娯楽施設、柔術家、力士、水泳術家、詩人、文藝、浮世絵師、浄瑠璃などの項目も。紺屋、湯熨斗洗張、呉服かけつぎ師という職業も。

お相撲さん(11名、磯島久吉、長龍松蔵、玉ヶ関金次郎他)が神戸に住んでいた。詩人では「橋本海關」(儒学者。画家・橋本関雪の父)。

書肆は、「寳文軒吉岡支店」(のちの宝文館)、「久榮堂熊谷幸助」「船山堂郷國三」など5軒。新古書林では、「日東舘石丸書肆」(のちの日東舘書林)、「福音舎土井書肆」など13軒掲載。

 「米穀並肥料商」に「北風正造」の名がある。北風家は歴代豪商として知られる兵庫津の廻船問屋。幕末から明治初め、当代「正造」は国家事業や神戸の開発事業に多額の資金・財産を提供した。大番頭の死、当主の病もあり、次第に没落。本書刊行の年、名門「北風商店」は倒産する。

 付録に官公庁幹部、議員、学校、寺社、居留地外国商の名もあり。「神戸商業学校 校長」は平生釟三郎(のち経済界に転身。甲南学園創立者のひとり)。「貴族院議員」川崎正蔵(川崎造船所創立者)。

 以前紹介した『豪商神兵湊の魁(ごうしょう しんぺい みなとのさきがけ)』(明治15年刊)は会社・商店名鑑であり観光案内。店舗風景、街並みの銅版画が豊富だった。掲載に広告料を取ったようで、有名店でも登場しないところがあった。1975年神戸史学会が復刻。2017年に神戸史談会が解説付きで復刻、『明治の商店 開港・神戸のにぎわい』(神戸新聞総合出版センター)。

それと比較すれば、本書は純粋に職業名簿。神戸市立図書館には所蔵されていない。国会図書館にはある。

(平野)「みなと元町タウンニュース」345号、Web版更新しています。拙稿は「諏訪山界隈8」西東三鬼後編。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/2021/05/02/townnews345.pdf