2021年5月25日火曜日

モダン語の世界へ

 5.23 図書館の本、書き込みや落書き、よくある。古い本だと複数の手によるものもある。「誤字」と思われる文字に重ねてボールペンで訂正していて元の文字が不明。「誤字」かどうかもわからないではないか。

 5.25 孫と公園。たくさん遊んで、帰り道の「あるけないー」はいつもどおり。帰宅しママの顔を見たとたん、すり傷が痛いと泣きべそ。昼ご飯食べ始めたら、痛みはどこかへ飛んでいった。

 買い物に出て、本屋さん、久しぶりに昔なじみの刈りあげ娘のレジにあたり挨拶。

 山室信一 『モダン語の世界へ――流行語で探る近現代』 岩波新書 1040円+税



 PR誌「図書」連載。著者は京都大学名誉教授、思想連鎖史。思詞学という方法をとる。

「浮遊する言葉を摑み取って、並べて、読んで、考えて、自分なりに関連づけて、いつでも連繋して引き出せるようにしておく」。すぐには役に立たない言葉の収集作業。

 本書のテーマは「……日常の衣食住や娯楽などの生活場面で使われる言葉がいかに世界的つながりの中で飛び交い、しゃれや語呂合わせ、こじつけや転借・転訛などを伴って言語文化として広がったのか、その時代的な意義とは何なのかを訪ね歩くこと(後略)」。

さらに、「モダン」は「近代」「現代」と訳されるが、「二つのモダン」はどこが、どう違うのか、を考える。

「モダン語の時代」を1910年から39年まで30年の時間で考える。約100年前の日本は、日露戦争、第一次世界大戦の「二つの戦後」、第一次世界大戦と日中戦争・第二次世界大戦の「二つの戦前」という時代にあたる。

モガ、モボなど新語、外来語、流行語。映画、音楽、風俗、エログロナンセンスに支那趣味。新たな文化が生まれた。「モダンガール」とそこから派生した多くの言葉の背景には女性の社会進出があり、あからさまに性の対象として表わし、蔑視がある。進歩的で、ユーモアがあるように見えても、差別、偏見に加担し、権力、暴力を内在する言葉がある。戦争景気、不況、革命など社会や世界情勢に関わる言葉も浸透した。グローバル化は始まっていた。

1930年の時点で、大宅壮一は「現代としてのモダン」を

〈「モダン」とは時代の尖端を意味する。しかもその尖端たるや、本質的生産的尖端ではなくて、末梢的消費的尖端である〉と総括した。

資本主義は、「広告宣伝によって次から次へと新奇な流行を造り出すことで消費の欲望を刺激し、モダンの尖端を永遠化する」。

 現代社会は環境問題、ジェンダー、新たな冷戦、格差と分断など多様な課題を抱える。コロナウイルスもある。インターネット上には無数の言葉があふれている。100年後の人はどう検証するだろう。

(平野)