5.19 「朝日歌壇」より。
〈この国が形を失いゆく姿買い物難民書店難民 (観音寺市)篠原俊則〉
〈遠足の子らに挟まれ電車内そっとスマホを仕舞い書を読む (松山市)安井愛弓美〉
大阪市内に引っ越した友人が近所にスーパーも本屋もないと言っていた。
5.20 息子からの母の日プレゼント、大幅遅れで到着。
■ 今野真二 『日本語と漢字――正書法がないことばの歴史』
岩波新書 940円+税
清泉女子大学教授、日本語学。2022年8月~9月のお茶の水女子大学での集中講義「日本語学特殊講義Ⅰ」を書籍化。日本語の複雑さ・おもしろさを再発見。
英語の「heart」にあたる日本語は「心」「こころ」「ココロ」と書ける。また漢字2文字「精神」にふりがな「こころ」と振って文字化することも可能。
〈つまり、日本語の文字化に際してはつねに選択肢がある。選択肢があるのだから、文字化のしかたが一つではない。だから「正書法」はない、ということになる。〉
本書は、「正書法がない」という観点から「日本語の歴史」をみなおし、「漢字・漢語」に注目する。仮名を発明し、これで日本語を文字化できるのに、漢字を使い続けた。
〈「日本語を文字化する」ということの中心(センター)に漢字があった。〉
中国大陸から漢字が伝わったのは5世紀半ば、公文書は中国の漢文を使った。日本語の話しことばをあらわすための文字はなかった。8世紀初めには漢字の音から万葉仮名をつくる。古代人は、ひとつの漢字があらわす中国語に対応する日本語は何か、と長い時間かけただろう。9世紀末頃には、漢字と漢字からできた平仮名・片仮名を使って文字化する。中国語文を訓読(翻訳)して書きことばがうまれる。漢語を借用して日本語の文字化を進め、漢字で漢語も日本語もあらわすことができるようになった。
(平野)