2023年8月29日火曜日

わんちゃ利兵衛の旅

8.27 孫たちはニイニイ(叔父)が大好き。そのニイニイがLINE電話に出ない、と姉は怒るし、妹は大泣き。居眠りしているニイニイを起こす。孫の機嫌直る。ヂヂバカチャンリン。

 英文学の先生から元町原稿の感想をいただく。楽しんで読んでくださり、文章作法指導や資料探索ヒントまで。ありがたいこと。ヂヂの能力が追いつかない。

 

 神崎宣武 『わんちゃ利兵衛の旅 テキヤ行商の世界』 

ちくま文庫 880円+税



 神崎宣武(のりたけ)は1944年岡山県生まれ、民俗学者。宮本常一に師事、陶磁器の技術伝播、食文化など研究。郷里の神社神主も務める。本書は1984年河出書房新社より出版。

 ヤシ、テキヤと呼ばれる露天商人を取材・調査。フーテンの寅さんの世界。神社・お寺の祭りや縁日をまわって商売。客集めに口上・タンカを切る。寅さんの「粋な姐ちゃん~~」「四谷赤坂六本木、チャラチャラ流れるお茶の水~」が思い浮かぶ。寅さんのは古本を商う人のタンカらしい。また、ヤシとは薬草、歯磨き、おしろい、線香など広義の薬品を扱う商人のこと。薬師、香具師。テキヤの象徴・信仰は中国神話の農業神「神農」。薬学の神でもある。

さて、旅まわりの商売となれば、地元との交渉、同業者とのトラブル防止が必要。

〈……その調整のために、まず、露天商人同士の統制が必要となった。各地方ごとにテキヤ組織が生まれたのである。〉

 神崎が取材した利兵衛はわんちゃ=ちゃわんなどセトモノ専門の露天商。明治の末からこの道60という長老。寅さんは毎回様々な商品を扱うが、利兵衛のようにセトモノ専門で60年通すのは稀なこと。

〈ということは、利兵衛が生きた時代は、総じてセトモノの商品価値が高く、セトモノが全国的に広まる時代であった、ともいえる。〉

 旅に生き、商品知識を蓄え、商売の工夫をし、話術を磨き、土地土地の風俗習慣を知る。仲間内の仁義を尊ぶ。無名の商人の一生と彼ら流浪の民から見た世間が語られる。

(平野)