2023年8月6日日曜日

7.30 「朝日俳壇」より。

〈角曲がる文学少女の白日傘 (新潟市)野澤千恵〉

7.31 「NR出版会新刊重版情報」78月号着。連載「本を届ける仕事」は韓国ハンギル社・金彦鎬(キム・オノ)代表。Web版まだ。

8.1 暑い暑いと唸っているうちに7終わり、8月到来。春の彼岸以来の墓参り、草ぼうぼうは先祖の怒りか

 炎天の下、販売員さんは駅頭に立つ。「BIG ISSUE460号、表紙は若き日の「サイモン&ガーファンクル」。インタビューはポール・サイモン。

 


8.2 訃報。料理研究家・奥村彪生。社会学者・立岩真也。

8.3 午前図書館。司書さんに資料を探してもらう。あるものはある、ないものはない。午後さんちかの古書市を覗く。

「みなと元町タウンニュース」372号着。Web版は未更新。

 孫電話、盆踊り練習。いよいよ来週神戸襲来。

8.5 「米朝一門会」サンケイホールブリーゼ。桂米朝の直弟子は米團治のみ、あとは孫弟子、曾孫弟子。一門の重鎮南光でさえ孫弟子。若手大喜利は米朝、枝雀、吉朝の懐かしい写真をお題にして賑やかに盛り上がる。米團治「代書」は依頼人が次々出てくる完全版。初めて聴いた。たいがい一人目で終わる。

 

 朝井まかて 『類』 集英社文庫 1150円+税



 初出は「小説すばる」2017年から2020年連載、208月集英社から単行本。

「類」は森類(1911~1991年)、森鷗外の末っ子。偉大すぎる父が亡くなった後の妻子たちの生活。経済的には不自由はないものの、世間の眼は厳しく、口やかましい。次第に家族間にも溝ができてしまう。本書は類の生涯を通して、文豪一家の幸福・不幸、華やかさと困窮、それぞれの才能、自立、そして家族ゆえの愛憎を描く。年の離れた異母兄は医学者、姉二人は性格も容貌も華があり、芸術・文学はじめ語学の才も。類は学業不振、中学中退。母は芸術の道に進ませようとする。

 類は絵と文筆で身を立てたい。良家から妻を娶る。当面は遺産と印税で暮らせるが、戦争で一変。労働などしたことがない。出版社に勤めるが役に立たない。本屋を開業。妻も献身的に働く。類は本屋をあきらめアパート経営。かたわら同人誌活動。妻は長年の無理がたたり入院。手術と生活の不安で口ゲンカ。

〈まず、「お父さんは坊ちゃんだから、自分の足で立つってことを知らずに育ったのよ」と、お見舞いされる。/「離家(はなれ)のアトリエで絵を描いて、女中がお食事でございますって呼びにくるまで、外の世界のことは何も考えずに生きていられたんだもの。齢頃になったら妻を娶って、でも親譲りの財産があるからそのまま安閑として生きていけるはずだったのよね。死ぬまでね。そんな境遇が戦争で続かなくなって、それで不幸になったんだわ。でもご自分が不幸なだけで、妻と子の不幸は僕のせいじゃない」/まるで新派の女優みたいな口説だ。こちらもつい、声が大きくなる。〉

繊細な末っ子はコンプレックスを抱えて一生を過ごした。父を知る作家・芸術家たちに目をかけられたということは、彼に魅力があったということ。鷗外の子ゆえの幸・不幸・運命を受け入れた。

(平野)