2014年4月27日日曜日

角川文庫 少年愛の美学


 稲垣足穂 『増補改訂 少年愛の美学』 角川文庫 19735月初版 
(私が持っているのは80111版)

装幀 杉浦康平

 手持ちのタルホ本もあとわずか。文庫から1冊だけ紹介。

解説 種村季弘

『少年愛の美学』は、表題からも察しがつくように、稲垣足穂のエロチシズム研究を主題にしたエッセイである。もともと百科全書的なひろがりを持つ稲垣足穂の世界は、譬えていえば、虚空にばら撒かれた夥だしい星座から成り立っていて、その一つがたとえば飛行機物語であり、たとえば宇宙論、たとえば哲学小説、鉱物学や機械学、詩的綺想文、ミニアチュレスクな風景画、喧嘩腰の観相術、さらにはエロチシズム研究などであって、それら一つ一つが互いに明確な距離を置きつつアナロジカルに照応し合っているのであるが、このうち本書は、『A感覚とV感覚』とともに、エロチシズム研究の集大成をなしていると言って差支えない。(略、本書は三部構成)幼少年におけるオブジェ嗜好、壮年における抽象への情熱、さらに老年の澄明なイデア界への追憶と発展していく三部構成のなかには、人生の朝昼晩がすべてさりげなく象嵌されている。しかもそのすべてが「セックス以前」または「セックスの彼方」にあって、このエロチシズム論にないものといえば、セックスの生臭さだけなのである。……
 
 

(平野)
 4月26日(土)「古書 うみねこ堂書林」開店! おめでとうございます
 

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 私、日夏耿之介『風雪の中の対話』(中公文庫、1992年11月)を購入しました。