2024年3月5日火曜日

つげ義春流れ雲旅

3.4 溜まっている本や家の用事にとりかからねばならない。まずは確定申告、年金受給・パート安月給でも税金払う。ところが、ドジして税務署まで二往復。情けない。これはきっと近くのギャラリー島田に行けとの神仏の思し召し、と理解。今年はまだおじゃましていなかった。スタッフさんや社長と世間話。

 しばらく更新のなかった読書人ブログを昨日久方ぶりに開いたら、昨年末から再開の様子。どんな事情があったのか不明だけれど、また読めるようになってうれしい。もうひとつ止まっているブログがあり、気になる。

「BIG ISSUE」474号。特集〈ふくしまの13年〉。「福島の人々や地域、自然と向き合い、自身の仕事や研究、支援活動に取り組んでいる人たち」が「この13年、そして今の福島の断片」を語る。

 


 つげ義春 大崎紀夫 北井一夫 『つげ義春流れ雲旅』 

朝日新聞出版 2600円+税



 1971年朝日ソノラマより単行本の復刻版。1969年~71年に「アサヒグラフ」掲載の旅と鼎談、73年・75年「グラフィケーション」(富士ゼロックス)掲載の旅、73年「るうじん」(豊島書房)の放談会収録。新たに、大崎「異空間への旅人・つげ義春」、「鼎談+1 五十年目の『流れ雲』」(3人+つげ長男)を掲載。

 大崎は朝日新聞社の編集者を経て俳人、詩人。北井は写真家。

 下北半島ほぼ一周、東北湯治場、豪雪の北陸、四国お遍路旅などなど、何かはあるが何もない場所。名所・名湯を求めず、観光せず、ただただ歩き、村・集落を訪ねる。凡人には現実の向こうのにある遠い世界のように思う。そこには土地の人たちの暮らしがある。

 北陸の山村の宿で夕食にヒエめしを出してもらう。おかみさんはヒエ2合米8合を炊いてくれた。昔この村の人は町に乞食をしに出た。彼らはヒエを食べたろう。旅の3人が食べているのは「あくまで珍味としてのヒエ」。たとえそれぞれに貧困体験があるとしても、自分たちはこの村の先人たちの〈こころ〉を食べることはできない、と思う。

〈わたしたちが〈旅人〉であるとき、わたしたちは〈風景〉に向って歩き、〈風景〉とふれあい、そして〈風景〉を通すぎていく者だ。風景あるいは土着の生活に対してわたしたちはわたしたち〈旅人〉のもつまなざしにひとつの決意をこめざるを得ないのだ。わたしたちが風景=生活者のまなざしを内部に持ち得るなどと考えるのは、おそらく愚かしい空想だ。〉

 それにしても、50年以上前につげ義春がメジャーな雑誌に登場していたとは知らなかった。

 4月にも筑摩書房から旅本が出る予定。

(平野)